コラム4回目の掲載につきまして
イノベーションズアイ様にて4回目のコラムを掲載していただきました。
第4回 基本合意いる? いらない?
M&Aでは、最終的な譲渡契約締結の前に基本合意書を締結するケースがあります。
それは、譲渡金額や譲渡時期など主だった条件が固まった段階において、その内容について文章にしたうえで買い手と売り手の両者が確認することを目的として行われます。
●基本合意を無視したケース
以前私がお手伝いしていた案件で、売主側から基本合意の締結を求められたミーティングの席上にて、買主側の専務さんが「これまで何十件もM&Aをやってきたけれども、基本合意を締結したのはたった一回だけ」と自慢げに話されたことがありました。
一瞬その場は凍り付いたものの、その場では基本合意について結論は出さずに終わり、その後、売主側が折れてくれたため基本合意なしで進んだのですが、売主側に不信感が生じ、(そのあとも様々なトラブルが続きましたが)最終的に破談となってしまいました。。。
●基本合意の目的
基本合意を締結する大きな目的のひとつは、売主側が売却への意思を固めていく点にあります。(買主側にとっても基本合意締結すべきケースもあるのですが、その話はまた別の機会に)口頭だけではなく文章でも合意内容を確認することによって、両者の合意内容を確かめながら進めていくのです。
逆に言えば基本合意締結を拒否するということは、”口頭での条件が当てにならない”と言っているようなものです。
先の専務さんは相手にとっての重要な目的を面前で無視した発言をしてしまったという自覚もなかったと思います。(交渉の節目で失礼にあたらないようにと、ご挨拶のために出席されたはずだったのですが・・・)
買主側からみて何十件もある案件のうちのひとつだったのかもしれませんが、売主側から見れば一生に一度あるかないかの人生をかけた決断ですので、規模の大小にかかわらず、少なくとも売主側から求められたケースには誠意を見せるべき場面だったと言えると思います。
「規模か小さいから基本合意は要らない」とタカをくくっていると足元をすくわれますし、売主側からみた場合には、買主側の本性を見極めるポイントのひとつともいえるでしょう。